研究課題
悪性腫瘍に対する化学療法・放射線療法の進歩に付随し、治療関連の二次癌として急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)が増加している。本研究計画では、治療関連造血器腫瘍の頻度や遺伝子異常、原因となる薬剤・放射線について解析する。昨年度、急性前骨髄球性白血病(APL)治癒後の治療関連白血病にRUNX1変異やキメラ遺伝子が関与することを示したが、これらAPL治療プロトコールにはエトポシドが含まれていた。そこで本年度は、エトポシドを用いた造血幹細胞に対するゲノム障害実験解析を行った。ヒト臍帯血からCD34陽性細胞を分取して増幅し、通常治療に用いる濃度のエトポシドに1時間曝露した後、様々な期間培養した。コントロール細胞も同様に培養を行い、曝露3時間後および1-2週間後にDNAを抽出した。MLL遺伝子、AML1遺伝子等の転座切断点が集積する領域を、inverse PCR法を用いて増幅し、キメラ遺伝子の検出を行った。エトポシド曝露後3時間では、多数の再構成バンドが認められたことから、エトポシドによりDNA切断後、修復機構が働くもののかなりの確率で転座が生じていることが明らかになった。しかし1-2週間経過すると、再構成バンドは減少することから、クローン性に増殖していくものはまれで、ほとんどが淘汰されることが推測された。その一方で、コントロール細胞では1-2週間の培養後に再構成バンドが増加したことから、抗癌剤などの曝露がなくても、サイトカイン存在下で急速に増幅している造血幹細胞は、経過中に遺伝子再構成が起こりやすいことが示唆された。こめことは胎児白血病やドナー由来白血病などの原因を考えるうえで重要な所見と考えられ、学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度同定したAPL治癒後MDS/AMLについて、原因となったと考えられる抗癌剤エトポシドの遺伝子傷害作用を確認した。
治療関連MDS/AMLを発症させる原因遺伝子異常を導入したヒト造血幹細胞、およびマウスBMTモデルの解析を行う。
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