研究課題/領域番号 |
22591039
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石川 秀明 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40294623)
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研究分担者 |
小幡 雅則 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80158831)
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キーワード | 骨髄腫 / IL-6 / Lyn / Akt / Fox01 / 解糖系 / NF-kB |
研究概要 |
骨髄腫細胞は、CD45陽性の細胞がIL-6に反応して増殖しておりIL-6によって活性化されるSTAT3とERK1/2に加えて、CD45によって制御されるsrc型PTK、Lynの活性が必須である。Lynを過剰発現させたIL-6依存性骨髄腫細胞株を用いた実験から、Lynの下流でPI3-kinase-Akt刺激伝達系が活性化されることがIL-6による骨髄腫腫細胞増殖に重要な働きをしていることが解った。Lynを過剰発現しない親株においても同様にPI3-kinase-Akt刺激伝達系の重要性を確認し、さらにAktの下流でFoxO1がリン酸化されていた。このことは、Lynを過剰発現させた骨髄腫細胞株で得られた知見がLynを過剰発現しているために起こった非生理的な現象ではないことを示している点で重要である。 1.Lynの下流で働く刺激伝達分子の探索 骨髄腫細胞においてIL-6刺激後にチロシン・リン酸化または脱リン酸化されるタンパク質を網羅的に解析し、熱ショック・タンパク質(hsp)、thioredoxin類の他にpyruvate kinase M2 isoform(PKM2)、lactate dehydrogenase (LDH)enolase(ENO)、phosphoglycerate kinase (PGK)などの解糖系の酵素を同定した。 (1}hsp90がLynを含む刺激伝達複合体を形成していることが免疫沈降法により確認された。 (2)thioredoxin類がCD45またはLynのレドックス状態に影響を与えることで、その活性を制御している可能性が示唆された。 2,Aktの下流で活性化される分子の同定 (1)FoxO1の標的遺伝子FasL、p27Kip1の遺伝子発現が低下していた。 (2)canonicalおよびnon-canonical pathway NF-kBの活性化は認められなかった。 (3)典型的なNF-kB標的遺伝子の発現の変化は観察されなかったが、興味深いことにBcl3標的遺伝子およびp53標的遺伝子の一部に発現変化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画したLynの下流で働く刺激伝達分子の探索、Aktの下流で活性化される分子の同定などは概ね予定通りに進んでいる。当初今年度の実験計画に記入したPI3-kinaseの下流で活性化されるAkt以外の刺激伝達経路の検討、IL-6刺激後にCD45-Lynの下流で働く遺伝子の同定、PIM2の酵素活性制御機構の解析などはまだ解析途上である。
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今後の研究の推進方策 |
解析途上のPI 3-kinaseの下流で活性化されるAkt以外の刺激伝達経路の検討、IL-6刺激後にCD45-Lynの下流で働く遺伝子の同定、PKM2の酵素活性制御機構の解析などの実験計画は時間がかかることは予想できており、もともと複数年かけて進行していく研究なので、来年度はこれらの研究を推し進めていく予定である。
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