研究概要 |
骨髄腫細胞は、CD45陽性の細胞がIL-6に反応して増殖しており、IL-6によって活性化されるSTAT3とERK1/2に加えて、CD45によって制御されるsrc型PTK、Lynの活性が必須である。Lynの下流でPI 3-kinase-Akt刺激伝達系が活性化されることがIL-6による骨髄腫腫細胞増殖に重要な働きをしていることが解った。さらにAktの下流でFoxO1がリン酸化されており、FoxO1の標的遺伝子FasL、p27Kip1の遺伝子発現が低下していた。しかしながら、canonicalおよびnon-canonical pathway NF-kBの活性化は認められず、典型的なNF-kB標的遺伝子の発現の変化も観察されなかったが、興味深いことにBcl3標的遺伝子およびp53標的遺伝子の一部に発現変化が認められた。 細胞内タンパク質のチロシン・リン酸化状態はPTK活性とそれを脱リン酸化するチロシン・フォスファターゼ (PTP) 活性のバランスで決定される。我々は、質量分析法によりCD45-Lyn刺激伝達系の下流エフェクター分子として解糖系の酵素群 (乳酸脱水素酵素LDH, エノラーゼENO) を同定した。さらに、CD45陽性骨髄腫細胞においてIL-6刺激後に脂質ラフトでチロシン・リン酸化されるタンパク質、脂質ラフト外でチロシン・脱リン酸化されるタンパク質を質量分析法により複数同定した。その中には、熱ショック・タンパク質、thioredoxin類とともにpyruvate kinase M2 (PKM2), LDH, ENO, phosphoglycerate kinase (PGK) などの解糖系の酵素が含まれていた。
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