多発性骨髄腫で認められる8q24染色体異常の腫瘍化と進展への関与について,分子遺伝学的に解析し以下の結果をえた.①骨髄腫細胞株で見出されたt(8;13)(q24;q13)を多色蛍光染色体解析法(SKY法)とアレイで解析,8q24でゲノムの増減を認める領域に着目し,切断点がPVT1内の第1エキソン近傍にあることを推定した.同領域を中心にcDNA bubble PCRで解析し,得られた遺伝子産物をサブクローニング,塩基配列を検討,キメラを形成する相手遺伝子としてNeurobeachin (NBEA) を同定した.NBEAは13q13に存在し多発性骨髄腫で高頻度に欠失することが報告されている.PVT1-NBEAキメラ遺伝子は,PVT1のエキソン1とNBEAのエキソン3で融合しており,NBEAのエキソン2のスタートコドンが欠失しエキソン3のATGがスタートコドンとなることが予想される.RT-PCRの結果,N末端を欠くと考えられる異常なNBEAの高発現を認めた.②さらに10株の骨髄腫細胞株を解析し,PVT1再構成の相手遺伝子としてWW domain-containing oxidoreductase(WWOX)を同定した.SKY法により骨髄腫細胞株でder(16)t(16;22)ins(16;8)(q23;q24)を検出,ゲノムアレイ解析から推定した切断点の候補遺伝子を標的としてRT-PCRを行い,PVT1 exon 1 -WWOX exon 9の融合を同定した.キメラ遺伝子を形成した異常WWOXは高発現していた.MMにおける8q24染色体異常ではPVT1が高頻度に再構成し,PVT1との融合により癌関連遺伝子の発現が変化することでMMの進展に関与していると考えられた.
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