多発性骨髄腫の治療成績の向上を目的として、骨髄腫幹細胞の同定とその薬剤耐性のメカニズムの解明を試みた。今年度は以下を明らかにした。 1) 骨髄腫幹細胞はCD49d/CD29複合体(VLA-4)を発現しており、この複合体を介する骨髄間質細胞との接着が細胞周期停止と抗がん剤耐性に重要な役割を果たしている。siRNAを用いてCD49d発現を低下させると、ストローマ細胞存在下における骨髄腫の抗がん剤感受性が亢進した。またプロテアソーム阻害剤であるbortezomibは、CD49d発現を低下させ、骨髄腫細胞の抗がん剤感受性を亢進させた。 2) 骨髄腫幹細胞はCD49d陽性・CD138陰性をマーカーとしてenrichすることが可能と考えられる。骨髄腫細胞株ならびに臨床検体からこの分画をソーティングし、NOGマウスに移植して定着を確認しているところである。同時にこの分画に特異的に発現する遺伝子をDNA arrayにてスクリーニングし、骨髄腫幹細胞に特異的に発現する分子の同定を試みている。 3) 骨髄腫幹細胞はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を強発現しており、HDACを介するクロマチン構造の安定化が抗がん剤耐性に関与していることを明らかにした。Bortezomibは骨髄腫細胞におけるHDAC発現を転写レベルで抑制し、細胞死を誘導することがわかった。またこの効果はHDAC阻害剤の併用によって増強された。Bortezomib単剤およびHDAC阻害剤との組み合せは、骨髄腫幹細胞のターゲティングに有効と考えられる。
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