骨髄腫幹細胞の維持には、骨髄内の造血微小環境が必要と考えられている。骨髄腫細胞の維持、薬剤耐性、骨病変の合併にも造血微小環境が関与している。骨髄腫幹細胞の研究を進める上で、骨髄腫モデルマウスが必要である。ヒト由来骨髄腫細胞株U266に蛍光色素EGFPを強制発現させ、同変異体を用いることでマウス体内の骨髄腫細胞の動態解析を可能にした。骨髄腫細胞は増殖が遅いため、従来の免疫不全マウスには生着しない。先天的にBリンパ球、Tリンパ球と補体を欠損する重度免疫不全NOGマウスに2.4グレイの放射線を照射後、EGFP-U266細胞を経静脈的に移植した。同細胞株はNOGマウスの骨髄に特異的に浸潤し、肝臓など他の臓器には転移しなかった。なお、マウス血清中にU266細胞が分泌するヒト型異常免疫グロブリンをELISA法で検出した。骨髄内のU266細胞の局在を解析したところ、骨芽細胞、破骨細胞の近くに存在しており、腫瘍細胞の維持に各種細胞が関与していることが伺えた。現在、この骨髄腫モデルマウスを用いて、新規抗がん剤の薬効評価を進めている。同時に骨髄腫幹細胞の同定に必要な表面抗原の組み合わせについて、フローサイトメトリー法による解析を行った。これらの研究成果は、骨髄腫幹細胞の同定と難治性の骨髄腫患者の生命予後を改善するための新規治療薬の開発につながることが期待される。
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