多発性骨髄腫は我が国でも人口の高齢化により増加している難治性の血液がんである。多発性骨髄腫は同じ血液がんである急性白血病と異なり、化学療法では根治に至ることはできない。白血病細胞と比較して骨髄腫細胞は細胞周期が遅いこと、骨髄中でも解剖学的に抗がん剤が届きにくい部位に限局していることが原因と考えられている。しかしながら詳しい分子病態は不明とされてきた。本研究では骨髄腫の原因となる骨髄腫がん幹細胞の純化と解析を各種方法を用いて行った。細胞の純化にあたり各種モノクローナル抗体とフローサイトメトリー法を用いた。機能解析としては遺伝子解析、増殖アッセイ試験を実施した。ケモカイン受容体、細胞接着分子、細胞外基質の関与が示唆された。また、先天性免疫不全NOGマウスを用いたヒト骨髄腫モデルにおいて、マウス体内の骨髄腫の挙動を解析し、大腿骨においては血流が豊富な骨幹端に腫瘍細胞が集積し、局所では骨髄腫細胞が骨芽細胞と破骨細胞と密接な関係をもつこと、細胞間の接着により抗がん剤が効きにくい状態であることがあきらかにされた。また、当該のヒト骨髄腫モデルに抗がん剤を投与したところ、p53依存的な細胞死が減少し抗がん剤の効果が出にくい状況であることが観察された。特にVE-カドヘリン蛋白陽性の骨髄腫細胞は抗がん剤に耐性であり、低酸素状態にも強いことが判明した。本研究成果により難治性の骨髄腫の病態があきらかとなり、新しい化学療法の開発につながることが期待される。
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