MLL-AF4白血病のS100A6分子病態と新規分子標的薬の開発

2010 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22591051
• 研究機関: 日本医科大学
• 研究代表者: 猪口 孝一 日本医科大学, 医学部, 教授 (10203267)
• キーワード: MLL/AF4 / S100A6 / FLT3ITD / FLT3-D835I / 達伝子導入マウス

研究概要

我々はMLL/AF4融合遺伝子(MLL/AF4cDNA)のクローニングに初めて成功し、マイクロアレイ解析とin vitro機能解析でS100A6(calcyclin)分子がMLL/AF4白血病に深く関係していることを明らかにした(Exp Hematol 2009 37:701-14)。マウス32D細胞を用いた我々のin vitro系ではbcr/ab1融合遺伝子やc-kit変異遺伝子、FLT3ITD変異遺伝子と違い、MLL/AF4融合遺伝子は単独では自立増殖能を獲得できない。MLL/AF4融合遺伝子とFLT3-D835I変異遺伝子の共発現で32D細胞は自立増殖能を初めて獲得することを明らかにした一方でMLL/AF4cDNA遺伝子導入(Tg)マウス作成にも成功し(第71回血液学会総会OS-1-3、アメリカ血液学会)、K-ras遺伝子異常の付加異常により多段階的にリンパ増殖性疾患の発症と悪性化に進展することを明らかにした(ASH2009 a3573)。MLL-AF4とFlt3TKDの両者の導入発現によって相乗的にS100A6がさらに発現を亢進させていることがわかった。このS100A6をsiRNAにて発現抑制を行うと自立増殖能は消失する。以上のことからMLL-AF4にFlt3 TKDが加わることによって、相乗的な腫瘍化能を獲得し、S100A6は機能的に腫瘍化に深く関与していることが明らかにした。S100A6がtumor necrosis factor-alphaを介してMLL/AF4分子の造白血病を促進するデーターを発見し、この点に関し精査している。

研究成果

• [雑誌論文] Activated K-ras protein accelerates human MLL/AF4-induced leukemo-Lymphomogenicity in a transgenic mouse model (2011)
  • 著者名/発表者名: Tamai K, Inokuchi K, et al
  • 雑誌名: Leuekmia 巻: (Epub ahead of print)
  • 査読あり
• [雑誌論文] Seven-year follow-up of patients receiving imatinib for the treatment of Newly diagnosed chronic myelogenous leukemia by the TARGET system (2011)
  • 著者名/発表者名: Tauchi T, Kizaki M, et al
  • 雑誌名: Leukemia Research 巻: 35 ページ: 585-590
  • 査読あり
• [雑誌論文] Identification of TINF2 gene mutations in adult Japanese patients With acquired bone marrow failure syndromes (2010)
  • 著者名/発表者名: Yamaguchi H, Inokuchi K, et al
  • 雑誌名: British Journal Haematology 巻: 150 ページ: 725-727
  • 査読あり
• [学会発表] Activated K-ras protein accelerates human MLL/AF4-induced leukemo-lymphomogenicity in a transgenic mouse model (2010)
  • 著者名/発表者名: Tamai H, Inokuchi K, et al.
  • 学会等名: 第52回アメリカ血液学会
  • 発表場所: Orlando, Florida, USA
  • 年月日: 2010-12-04
• [図書] 血液・造血器疾患のマネージメント (2011)
  • 著者名/発表者名: 猪口孝一、室井一男, 他
  • 総ページ数: 219
  • 出版者: 医薬ジャーナル社