研究概要 |
ヒトES細胞において確立した独自の好中球分化誘導法(Saeki K, et al.: Afeeder-free and efficient production of functional neutrophils from human embryonic stem cells. Stem Cells 27 : 59-67, 009.)を駆使してヒトiPS細胞からの血液細胞分化誘導を検討したところ、マクロファージ主体となってしまった。しかし、分化誘導初期には骨髄系の前駆細胞(好中球の元になる細胞)は存在し、これをマクロファージが貪食していると思われる所見を得た。このようなマクロファージによる血球貪食はヒトの疾患でも知られており、その培養系モデルとなる可能性を想定して分子機構の解析を試みた。昨年度と同様にI型インターフェロン(IFNα1、IFNα2、IFN61)の発現をRT-PCRにより解析したところ、やはり、ヒトES細胞では3株中1株のみで、ヒトiPS細胞では4株全てにおいて分化誘導に伴ってI型インターフェロンの発現が認められる事を確認した。以上のように、ヒトips細胞からの血球分化において1型インターフェロン産生が高頻度である傾向を認めた。しかしながら、ヒトiPS細胞の株数(さらには供給元)を増やし、培養条件を詳細に検討したところ、一部の細胞株において、低密度培養条件において好中球優位の分化が認められた。一方、ヒトES細胞でも細胞株数を増やして詳細に検討したところ、細胞株によってはマクロファージ優位の分化が認められた。以上より、ヒトiPS細胞における血球貪食による好中球分化不全には再現性が必ずしも無いことが明らかとなった。
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