研究概要 |
本研究においては従来培養増幅することが困難とされていた、がん細胞や白血病細胞に対して強力な細胞障害活性を有する同種NK細胞を臍帯血などから効率的に増幅することにより、新しい細胞療法の基盤構築を目的としています。臍帯血をリンパ球ソースとし、ヒト血清を添加したGMPグレーの培地にIL-2,IL-15などのサイトカインや抗CD3抗体などを加えて培養することによって、約3週間でNK細胞を純度約70-80%、約1000倍に増幅しうることが可能となった。さらにこのようにして培養増幅したNK細胞は、NK細胞活性化受容体であるNKG2Dや細胞内障害物質であるGranzymeを高発現しており、活性化されたNK細胞であることが明らかとなった。これらのNK細胞はCD16+CD56+細胞が7割でありNKp30,NKp44,NKp46などの活性型NK細胞受容体を発現していた。またこの培養増幅した活性化NK細胞は白血病細胞株K562を効率よく障害したばかりでなく、患者由来の白血病細胞をも障害することが可能であるが、同種PHA blastを障害することはないことが明らかとなった。これらの結果から、臍帯血などを用いて白血病細胞のみならずHLA class I発現の低下することの多い固形癌などに対する細胞障害活性を有する活性化NK細胞を特異的かつ効率的に培養増幅する方法が確立できた。今後、活性化NK細胞を用いた細胞療法への発展が期待されることが意義深い。
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