研究概要 |
本研究ではVWFのGPIb結合能を欠落するノックインマウスVWFK1362Aを用い、GPIb結合機能とその他の機能を直接生体内で分離、量的調節を行うことを目的とする。平成22年度はVWF-/-とVWFK1362Aの交配を行った。VWF-/-マウス(Denis, C., et. al. PNAS, 1998)は出血傾向を呈するがホモ接合体メスにおいても妊娠可能であり、出産時の出血死はあまり見られないため、ホモ接合体同士の交配を行い、第2世代目にVWF-/K1362Aを得た。本年度はさらにF8-との交配を計画していたが、VWF-/K1362Aメスが予定匹数以上に得られず、当初不妊傾向があったため、交配計画に多少に遅延が発生した。事実VWF-/-との交配ではVWF-/-X+X-のメスとVWF-/-X-Yのオスが誕生するが、両者の交配でVWF-/-X-X-が誕生する可能性があり、VWF-/-X-X-とVWF-/-X-Yの交配によりVWF-/-X-X-とVWF-/-X-Yのどちらかが安定的に作出出来る可能性があったが、未だその誕生をみていない。今後VWF-/-X-X-の妊娠の可能性によっては妊娠・出産時に大量出血で死亡する可能性がありその場合はVWF-/-X+X-のメスを用いて交配を続行する予定である。一方、交配後の各系統における自然発症の出血傾向について検討をはじめている。VWF-/-、VWFK1362Aについては尾の先端部から3mmの部分を切断し、尾を生理食塩水に浸水し、出血時間を測定する方法によるtail bleeding timeを測定を開始した。今後死亡した成体について臓器出血の有無を検討する予定である。VWF-/K1362Aについては、十分な匹数が得られていないことから検討には至っていない。
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