研究概要 |
本研究の目的は、ヒト間葉系幹細胞(MSC)におけるHLAクラスIb分子の発現調節機構を検討するとともに、その薬理学的・生化学的な制御方法を探索することを通じて、MSCの特性を利用したさらに有効性の高い細胞治療法開発のための基礎的知見を得ることである。 平成22年度の研究では、まず、ヒト骨髄由来MSC・歯髄由来MSC・造血器系細胞株を用いてHLA-E,-F,-G mRNAの発現をRT-PCR法等を用いて定性的・半定量的に評価する系を確立した。また、高感度ELISA、フローサイトメトリー等によってHLA-E,-F,-Gの蛋白発現を評価する系の確立を目指したが、この経過中に、特にHLA-Gの測定系において過去の文献で用いられていた実験方法に問題点があることが判明した。そこで、研究協力者らとELISAおよびイムノブロット法による適正なHLA-G蛋白の検出系を開発し、それらの方法を用いて、骨髄由来MSC・歯髄由来MSCにおけるHLA-G蛋白の発現を確認したところ、いずれにおいても、未刺激下ではHLA-Gの蛋白発現をほとんど検出できないことが判明した。次いでIL-10存在下で骨髄由来MSCを培養した後の、培養上清・細胞溶解物を用いて同様の検討を行ったが、いずれからもHLA-Gを検出することはできなかった。 今後は、次年度以降の研究において、HLA-E,HLA-F蛋白の発現を正確に検出するための測定系を確立する予定である。
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