研究概要 |
申請者らは、クロマチンリモデリング因子であるポリコーム遺伝子に注目し、これらがGVHDにおけるメモリーCD8陽性T細胞の維持およびGVHDの進展に関わることを報告してきた。(Zhang Y. et al. Nat Med 2005, Kato K. et al. BBMT 2010)。ポリコーム遺伝子は幹細胞システムに共通な制御分子として機能し、さらに癌幹細胞におけるエピジェネティクス異常などにも深くかかわることで最近注目されている。アロ反応性エフェクターCD8陽性T細胞においても、AICDから逃れ、メモリー細胞として生存させる仕組みとして、申請者はポリコーム遺伝子であるEZH2に注目し、その役割について検討を行ってきた。 マウスGVHDモデルを用い、EZH2がGVHDの治療標的となりうるかどうか検証した。EZH2を抑制する3-Deazaneplanocin A (DZNep)を投与、GVHDに対する予防および治療効果を認めた。一方、GVL効果は維持されていた。DZNep 投与群のT細胞の解析から、EZH2がエフェクター関連遺伝子(IFNγ, Trail, Eomes,Tbx21など)にはあまり影響しない一方で、アポトーシス関連遺伝子Bimの発現を上昇、T細胞をアポトーシスに導き、GVLを保持しながら、GVHDを抑制することを示した(Kato et al. BLOOD 2012)。本研究は、遺伝子を標的とした画期的なGVHDの制御方法として、コメントを頂いた(Chao N.BLOOD 2012)。
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