研究概要 |
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対する同種造血幹細胞移植(allo-SCT)は、長崎大学病院および関連2移植施設にて2011年4月時点で77例が施行され、うち5年以上の長期生存は15例である。長崎大学在任中に13例について定量PCR法を用いたHTLV-1プロウイルス定量を検討したが、ウイルス量が検出限界以下となった例は既報告例(Leukemia 21. 2007)のみで、新たな症例の積み上げはなかった。研究代表は24年度より琉球大学に異動となり、新たに実験系の構築および沖縄県のATL症例について調査中で、現在も研究を継続中である。 一方長崎県でallo-SCTを施行したATLの症例を集積し解析する中で、中枢神経浸潤を来したATLに対して、allo-SCTにより長期生存が得られる可能性があること、そしてそれには免疫担当細胞によるgraft-versus-ATL(GvATL)効果が関与している可能性があることを見出し報告した(Int J Hematol 94: 81-89, 2011)。さらにATLに対するallo-SCT後再発した症例に対する治療法とその効果を解析し、多くは急激な経過を辿るものの一部にGvATL効果を誘導するためのドナーリンパ球輸注が有効な例が存在することを報告した(Blood 121: 219-225, 2013)。またATLに対するall-SCTは急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病の場合と比べて、感染症合併が移植後死亡に及ぼす影響が大きく、強力な感染対策法を施す必要があることを示した(Biol Blood Marrow Transplant 19: 607-615, 2013)。ATLに対する臍帯血移植は通常化学療法に対して反応性を有する症例に対しては、実行可能性があることを示した(Int J Hematol 97: 485-490, 2013)。
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