研究課題
奈良医大輸血部では全国の医療機関からの依頼により血栓性微小血管障害症(TMA)の病態解析を行い、2011年12月末までに1085例のTMAの解析を終了した。そのうち、造血幹細胞移植(SCT)後にTMAを発症した症例は67例であった。SCT-TMA症例では、TMAの典型例である血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)とは異なり、ADAMTS13活性は著減しないことが報告されているが、我々の集積した症例の同活性は、4%の1例を除き、他の66例は10%以上であった。これらの症例はvon Willebrand因子(VWF)が増加していることより、ADAMTS13とVWFの酵素・基質のアンバランスがTMA発症の病因と考えられたが、診断時の検体のみしか解析できず、経時的な検討ができなかった。そこで、奈良医大附属病院院内でのSCT症例について、TMA発症にかかわらず検体を保存し、解析した。現在まで5例のSCTについて解析を続行中であるが、明らかなTMAと診断されている症例はない。VWFの推移を解析したところ、3例でday5からday14にVWF抗原の上昇を認め、最高値286%、404%、590%であった。この時期は、移植細胞の生着時期に一致しており、生着時の免疫反応がVWFの上昇に関与している可能性が示唆された。これらの症例は、移植直後のdayOからVWF抗原量が169%、352%、219%と上昇していることより、移植前より血管内皮細胞障害が強い可能性がある。ADAMTS13活性に関して10%未満への著減例は認めなかったが、経時的に解析が終了した2例ではday10に33%、day19に26%に低下していた。以上のようにSCT-TMAの発症機序として、ADAMTS13だけでなくVWFも重要であり、両者のバランスを経時的に解析することがTMA発症予測に重要であると考えられた。
4: 遅れている
TMAの発症症例が少ないこと、経時的な採血ができている症例が少ないことにより、症例の解析が遅れている。
TMA解析センターへの依頼症例は、経時的な解析が困難なため、院内での症例をTMA発症有無にかかわらず、集積してTMA発症の有無で比較検討する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
Hepatology research
巻: 42 ページ: 459
10.1111/j.1872-034X.2011.00950.x
PLoS ONE
巻: 7 ページ: E33029
10.1371/journal.pone.0033029
Intern Med
巻: 50 ページ: 643-647
Thromb Res
巻: 128 ページ: 169-73
Eur Resp J
巻: (印刷中)
10.1183/09031936.00186210
Thromb Haemost
10.1160/TH11-11-0799