これまで我々は、血小板においてRIAMがRap1のeffectorとして働き、血小板凝集惹起物質受容体からインテグリン活性化までの細胞内刺激伝達経路において重要な役割を果たしている事を培養細胞の実験系あるいはES細胞から分化誘導して作製した巨核球を用いた実験系で示してきた。 本研究では、血小板特異的にRIAMを欠損したマウスを作製し、実際の血小板において、さらには生体内の血栓止血機能においてRIAMがどのような役割を持つのかを解明する事を目的としている。 当該年度では、その第一段階として、Cre遺伝子の発現によりRIAMを欠損出来るLoxRIAM遺伝子のヘテロマウスを作製した。次にこのヘテロマウスを血小板およびその前駆細胞特異的にCreを発現するPF4-Creトランスジェニックマウスと掛け合わせ、最終的にはこうして出来たLoxRIAM+/-かつPF4-Cre(+)のマウス同士を掛け合わせる事で血小板特異的RIAM欠損マウス(LoxRIAM-/-かつPF4-Cre(+))を作製し、その血小板機能および血栓止血能を評価する予定である。 RIAMの発見により、受容体刺激からインテグリン活性化までの一通りの細胞内刺激伝達経路に関わる遺伝子が明らかとなった。しかし、これまでの研究の成果からは、RIAM以外にもRap1のeffectorとして働く分子の存在が示唆されているので、インテグリン活性化に関わる遺伝子の詳細を解明する事で新規の抗血小板薬の標的遺伝子を探索する事を最終目的としているが、この細胞内刺激伝達系に関わる分子の多くが免疫応答にも関与している事から新規免疫抑制剤への応用も期待出来る。
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