研究概要 |
我々が樹立した、ブレオマイシン(BLM)誘導性強皮症モデルを用いて、新しい分子標的薬等の、抗線維化効果の有無ならびにその分子生物学的機序の検討を行った。まず、分子標的薬であるSunitinibの効果を検討する目的で、C3H/HeJマウスの背部に、BLM (250μg/ml)を皮内注するのと同時に、sunitinib (4mg/kg/day, 40 mg/kg/day) を3週間(週5回)経口投与した。観察期間内では sunitinibはtolerableであり、皮膚硬化の誘導は、病理組織学的に抑制されてみられ、真皮厚、病変部に浸潤する肥満細胞数、皮膚のコラーゲン含有量も有意に抑制されてみられた。一方、肺線維症に対しては、予測された抗線維化効果はみられず、Sunitinib 4mg/kg, 40mg/kg投与群のいずれにおいても肺線維化病変はコントロールとほぼ同程度の病理学所見を呈し、肺胞壁の浮腫を伴う肥厚、炎症細胞浸潤も残存してみられた。皮膚と肺組織の、BLMに対する感受性の違いが推測された。次に、近年強皮症の病態に注目されているエンドセリンの受容体拮抗薬であるボセンタンの治療効果を検討した。CH3/HeJマウス背部へBLM(250μg/ml)により誘導された強皮症様の皮膚硬化は、ボセンタン(150μg/ml)の同時経口投与で病理組織学的にも有意に減弱した。ボセンタン投与群では真皮内筋線維芽細胞の減少とE-selectin陽性の血管内皮細胞と毛細血管(CD31陽性)の増数とに相関していた。ボセンタン投与群では真皮内への肥満細胞浸潤、ならびにそれらの脱顆粒の程度が減少していた。ボセンタンがE-selectin陽性血管床の増加を介して、病初期の肥満細胞や他のエフェクターとなる炎症細胞浸潤を抑制することにより、BLM誘導性皮膚硬化を改善している可能性が示唆された。
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