関節リウマチ(RA)モデルマウスのK/BxNマウス血清移入関節炎において、NotchリガンドのDelta-like 1(Dll1)を阻害すると関節炎が抑制され、そのメカニズムとしてリンパ管新生制御および破骨細胞分化制御による骨破壊抑制が関与していることを明らかにしてきた。このとき、関節組織の炎症も抑制されていたことから、Dll1が炎症にも関与している可能性が示唆された。実際、マクロファージをIFNγで刺激するとNotch受容体のNotch1とNotch3、NotchリガンドのDll1、Jagged1、Jagged2の発現が増強した。Dll1の発現はIFNγを除いても持続していた。したがって、一過性のIFNγ産生によりマクロファージ上に発現が誘導されたDll1がマクロファージ上に常に発現しているNotch2を刺激、さらにはT細胞などに発現しているNotch受容体を刺激することにより炎症に関与している可能性が考えられた。しかしながら、IFNγ刺激で発現が誘導されるMHCクラスIIおよびCD80分子の発現誘導にはDll1は関与しておらず、Jagged1とJagged2が関与していた。マクロファージのIL-6産生はNotch1、Notch2、Notch3刺激で上昇した。 一方、RAモデルマウス関節より樹立した滑膜線維芽細胞をTNFαまたはIL-1βで刺激したときの増殖へのNotchの関与は認められなかった。また、Dll1の発現も認められなかった。しかしながら、IL-6、MMP-3の産生にはDll1によるNotch2刺激が関与していた。これらの結果より、RA関節局所において、炎症によりマクロファージ上に発現が誘導されたDll1が滑膜線維芽細胞上のNotch2を刺激することにより炎症性サイトカインや関節破壊因子の産生を惹起し関節炎の悪化に関与している可能性が示唆された。
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