研究課題
本研究の目的は関節リウマチ(RA)に特異的なシトルリン化ペプチドを同定し、そのバイオマーカーとしての役割を検討するとともに、抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)の産生機転を明らかにすることである。平成22年度は、抗MCV抗体(変異型シトルリン化ビメンチンに対するACPA)について血清レベルでの反応性を検討した。その結果、RA血清のシトルリン化ペプチドに対する反応性は多様であり、抗MCV抗体と抗CCP抗体の反応優位性に基づきRA患者を分類できることが確認された。予備検討では抗MCV抗体優位群では小関節に関節炎をきたしやすい傾向が認められた。これは新規ACPAアッセイ系が確立された場合、複数のACPA反応パターンの組み合わせによりRA患者をサブセット分類できる可能性を示唆し、臨床的意義が期待される。シトルリン化抗原については、候補分子アプローチについて検討した。シトルリン残基はペプチド中のアルギニンにシトルリン化酵素が作用することにより生成される。従ってアルギニンに富むペプチドはRA特異的シトルリン化ペプチド候補となる。フィブリノゲン、ビメンチンのアルギニン比率はそれぞれ5.7%、9.2%であるが、今年度はマトリックス蛋白、核内転写因子、熱ショック蛋白、アポトーシス/細胞増殖関連因子などRAとの関連が推定される分子のアルギニン比率を検索し、その比率の高い蛋白質のリストを作成した(2.0%~23.9%)。その中でフィブロネクチン、トロンボモジュリンなどRAとの関連が示唆される分子について、シトルリン化体の血清学的解析を進めた。平成23年度は、候補分子アプローチと並行してマウス関節炎やRA患者検体からのRA特異的なシトルリン化ペプチドの探索、B細胞レベルでのACPA反応性の検討を行う予定である。
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