研究課題/領域番号 |
22591087
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
尾崎 承一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (00231233)
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研究分担者 |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
黒川 真奈絵 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90301598)
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キーワード | ANCA関連血管炎 / 前向き臨床試験 / 病態関連ペプチド / プロテオミクス / アポリポ蛋白A-1 |
研究概要 |
本研究は顕微鏡的多発血管炎(MPA)の病態・病勢と関連性の高いバイオマーカーを網羅的検索により同定し、その臨床的意義を解明することを目的としている。昨年度は以下の成績を得た。 (1)AC13の同定とMPAの病態・病勢との関連: MPA患者の標準治療前後の血清ペプチドの網羅的解析で検出したペプチドp1523は、アミノ酸配列からアポリポ蛋白質A-I(ApoA-I)のC末端13アミノ酸であり、AC13と命名された。MPA患者の治療前後で親タンパクのApoA-IはAC13と逆の変化を示した。AC13はヒト微小血管内皮細胞株を活性化してIL-6およびIL-8の転写と産生を増加させた。AC13は血管内皮細胞株を刺激してHsp27の産生を促進した。以上のことから、MPAの疾患活動性の高い時期には、ApoA-IのC末端からAC13が遊離して血中濃度が上昇し、血管内皮細胞に作用してIL-6およびIL-8などの分泌を亢進させMPAの病態に関与することが示唆され、AC13はMPAの新たなバイオマーカーとなることが示唆された(Arthritis Rheum 63:3613-24,2011)。 (2)AC13の多検体測定系の樹立: AC13のN端をより高感度に認識する家兎抗血清を作成し、C端をBiotin標識した合成AC13、および、酵素標識Avidinを用いた競合ELISAを樹立した(未発表)。 (3)AC13の遊離機序の解析: AC13はApoA-IのLeu254とSer255の間の切断により遊離されると考えられる。その機序を明らかにするため、昨年度はカテプシンGの関与を検索したが、ApoA-IとカテプシンGの反応系ではAC13の生成は認められなかった(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MPA患者の標準治療前後の血清ペプチドの網羅的解析で、有意の変動を示したものとしてp1523を含め複数の候補ペプチドを検出したが、2年間の研究でp1523(AC13)の解析のみに焦点を当てざるを得なかった。しかし、それにより一定の成果は得られ、「AC13の臨床的意義」の研究成果の第一報をArthritis Rheum誌に掲載することができた。一方、AC13の多検体測定系の開発にも時間を要した。しかし、昨年度までに家兎抗AC13抗血清の作成、そこからポリクローナル抗AC13-IgGの精製、Biotin標識合成AC13の作成を経て、多検体の迅速なAC13測定を可能にする競合ELISAを樹立して、最終年度の解析に供することができた。また、AC13が親タンパクのApoA-Iからの遊離過程を明らかにするプロジェクトでも、まず、カテプシンGの関与の検討を重点的に行ったがネガティブな結果にとどまったことも、研究の遅れの遠因となった。
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今後の研究の推進方策 |
以下のプロジェクトを有機的に推進する。 (1)昨年度に樹立した「競合ELISAによるAC13測定システム」を用いて、種々の病態・病勢の患者血清のAC13を測定し、血中AC13の臨床的意義の解朝に一定の結論を出す。 (2)AC13存在下にIL-6やIL-8の分泌をする血管内皮細胞株よりAC13受容体の同定を行い、AC13の生理活性の分子機序の解明を行う。 (3)ApoA-IのLeu254とSer255の間の切断酵素を同定し、ApoA-IからAC13が遊離する過程の分子機序を明らかにする。 (4)p1523/AC13以外にバイオマーカーとしての有用性があると考えられた残りのペプチドの中で、特にp1738およびp2503の2つのペプチドに注目してAC13と同様の解析を進める。
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