関節の滑膜炎に伴う滑膜細胞の異常増殖は関節リウマチの主徴の1つであるにも関わらず、そのメカニズムについては意外なほど分かっていることが少ない。本研究では、全ゲノムを対象としたスクリーニングにより見出した新規滑膜細胞増殖因子SPACIA1について以下の1~3を明らかにし、リウマチ滑膜細胞増殖の分子レベルでの理解を目指している。 1、SPACIA1の発現制御メカニズムについて SPACIA1は滑膜炎に伴って滑膜細胞で発現誘導され、その細胞増殖を制御する。そこでまずSPACIA1遺伝子のプロモーター解析を行なった。その結果、SPACIA1遺伝子の転写開始点から約200bp上流までの領域にコアプロモーターが存在することが明らかとなった。この領域内にはNF-κB結合部位様の配列が認められ、そこに点変異を導入してレポーターアッセイをおこなったところ、ほぼそのプロモーター活性は消失した。一方でTNF-αやLPSなどのNF-κB誘導刺激に対してこのコアプロモーターが不応答であることも確認した。今後この部位に結合する転写複合体を同定していく予定である。 2、SPACIA1による滑膜細胞増殖制御メカニズムについて SPACIA1による滑膜細胞増殖の制御を分子レベルで明らかにするために、まずSPACIA1が直接結合する因子をYeast two-hybrid法により特定することとした。その結果、いくつかの転写因子や転写後調節に関わる因子が得られた。今後は、それぞれの結合を機能的な側面から検証していく予定である。 3、SPACIA1は関節リウマチの原因因子か? リウマチ動物モデルの1つであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)を用いてSPACIA1遺伝子の役割をしらべるため、まずSPACIA1ノックアウトマウスをCIAに適したDBA1/J系統へ戻し交配を行なっており、計画通り順調に進んでいる。
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