1、SPACIA1の発現機構について-SPACIA1は滑膜炎に伴って滑膜細胞で発現誘導され細胞増殖制御に関わる。その発現誘導機構を明らかにするために、SPACIA1遺伝子プロモーターに作用する転写因子複合体を精製してきた。イオン交換カラム、ゲル濾過カラムに続き、平成24年度は結合配列のオリゴDNAを固定化したアフィニティーカラムを用いて精製を行ない、その結合画分を質量分析器により解析した。55種のタンパク質が同定され、その中に7種のDNA結合タンパク質を見出した。現在この7種について機能的な側面から真の転写因子を同定中である。 2、SPACIA1による滑膜細胞増殖制御機構について-SPACIA1による滑膜細胞増殖の制御を分子レベルで明らかにするために、まずSPACIA1が直接結合する因子の同定を試みている。培養滑膜細胞の核抽出タンパク質をイオン交換カラム、ゲル濾過カラムで精製した。その後のアフィニティー精製で決め手が無く、ゲル濾過カラム後の画分を用いて質量分析器による解析を行ったが100を超えるタンパク質が検出された。一方でSPACIA1が細胞周期因子CDK6 mRNAの安定性に関わっていることを見出した。まずCDK6 mRNA上にSPACIA1複合体が存在するかを明らかにし、その場合mRNAの結合配列を特定して、そのオリゴRNAを用いた精製を行っていく予定である。 3、SPACIA1は関節リウマチの原因因子か?-SPACIA1ノックアウト(KO)マウスにコラーゲン誘導関節炎(CIA)を適用した。その結果、野生型マウスに比較して若干症状が軽い傾向も見られたが有意差は認められず、関節炎が発症した。SPACIA1過剰発現マウスの結果からSPACIA1が関節炎の増悪因子であることは明らかであるが、今回のKOマウスの結果より関節炎の発症に必須の原因因子ではないことが明らかとなった。
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