遺伝子異常から明白なフェノタイプがヒトに出現する「自己炎症疾患」を研究することで、ヒトの遺伝子がコードする蛋白の機能が解明できると考えられる。自己炎症疾患では、ひとつの遺伝子異常によってヒトに生じる症状が明白であり、その遺伝子がコードする蛋白のヒトでの役割が解明される可能性がある。つまり、ポストゲノムの時代の有力なツールとなりうると考え、研究を計画した。 平成22年度の本研究において、中條-西村症候群の疾患遺伝子を同定した。GeneChipアレイを用いてSNPsのhomozygosity mappingを行い、患者に共通かつ特異的なホモ領域の候補遺伝子座を同定、その領域にある30遺伝子を候補遺伝子として、シークエンスを行った。イムノプロテアソームの1コンポーネントPMSB8に点遺伝子変異が存在し、アミノ酸置換を伴っていた。次に、患者、患者の母親、健常者から樹立した細胞株を使用してプロテアソームの機能解析を行った。酵素活性のうち、キモトリプシン活性が著減、トリプシン活性とカスパーゼ活性も半減していた。患者の母親(ヘテロ)の線維芽細胞では、各酵素活性とも、患者と健常者の中間の値であった。さらに、プロテアソームの各コンポーネントのウエスタンブロット法にて、プロテアソーム形成不全を証明した。患者皮膚組織と患者由来培養細胞において、ユビキチン蓄積を認めた。以上の結果から、中條-西村症候群は、遺伝子変異によるプロテアソーム機能異常に起因する疾患であることが判明した。
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