タバコ由来の大気汚染物質は喘息の難治化因子として重要であり、喫煙はステロイド薬の治療効果を減弱する。喫煙による酸化・窒素化ストレスはステロイド抵抗性に関与すると考えられている。本研究は、喫煙喘息と非喫煙喘息における気道炎症や窒素化ストレスの差異について呼吸機能を含めた比較検討を行ない、喫煙喘息におけるステロイド抵抗性の病態を解明することを目的とした。 喘息では炎症性サイトカインによりNO合成酵素(NOS)が誘導され、呼気NO濃度(FE_<NO>)が高値となる。FE_<NO>は喀痰好酸球数や気道過敏性と相関することから喘息の気道炎症マーカーとして有用である。さらに喘息患者の閉塞性障害の程度は、FE_<NO>や喀痰中の3-ニトロタイロシン陽性細胞数と有意に相関するため、これらのバイオマーカーは気道における窒素化ストレスの指標としても有用である。 FE_<NO>測定は2005年に測定条件が標準化されたが、喘息治療における管理目標は明確ではない。気道における窒素化ストレスの指標としてFE_<NO>を用いるにあたり、まず日本人のFE_<NO>正常値を算出した。日本人の成人健常者240名を対象にした検討で、FE_Noの正常値は15ppb、正常上限値は37ppbと算出された。非喫煙者と既喫煙者における正常値の差は認められなかった。成果は国際誌に報告した(Allergolint 2010; 59: 363-367)。さらにFE_<NO>測定は喘息診断に有用であるが、そのカットオフ値は明らかではない。そこで健常者と喘息患者の弁別におけるカットオフ値を算出し、喫煙や鼻炎の合併など背景因子の影響について検討を加えた。研究成果は国際誌に採択された。これらの基礎的検討によりFE_<NO>の管理目標およびFE_<NO>に対する喫煙の影響が明らかとなった。現在、喫煙喘息と非喫煙喘息における気道炎症、呼吸機能および窒素化ストレスの差異について比較検討を行っている。
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