喫煙による酸化・窒素化ストレスはステロイド抵抗性に関与すると考えられている。本研究は、喫煙喘息と非喫煙喘息における気道炎症や窒素化ストレスの差異について比較し、喫煙喘息の気道における病態生理学的特性を解明することを目的とした。 呼気一酸化窒素濃度(FENO)は喘息における好酸球性炎症の捕捉に有用であるが、宿主因子が測定値に影響を及ぼすことが、臨床応用の障害になると考えられていた。我々は、喫煙や鼻炎合併の影響を加味した喘息診断におけるNOカットオフ値を算出し、これらの宿主因子が影響してもFENOが喘息補助診断に有用な検査法であることを報告した(Allergol Int 2011)。ステロイド治療を行いながらもFENOが高値で遷延する喘息症例が存在する。我々は、遷延するFENO上昇の独立した規定因子として、喫煙歴、末梢血好酸球増多、好酸球性副鼻腔炎を同定した(Clin Exp Allergy 2012)。 テオフィリンは難治性喘息やCOPDの気道において、マクロファージや好中球から産生される炎症関連物質を抑制することが知られている。喫煙や気道炎症に伴う酸化・窒素化ストレスにより増加する活性窒素種(peroxynitrite)は気道障害を増強することが知られているが詳細な機序は明らかでなく、テオフィリンの抑制効果も不明である。我々は、peroxynitriteが線維芽細胞からのmatrix metalloprotease2および9の産生を促進し、気道のリモデリング進展に寄与し得ること、さらにテオフィリンがNF-kBとHDACの経路を介してMMP-2および9の産生を抑制すること、を見出した(Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2012)。この結果は、窒素化ストレスによる喘息気道の障害の機序を一部解明するとともに、治療における展望を示した。
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