研究概要 |
TIM-4はT cell immunoglobulin and mucin domain(TIM)ファミリーに属し、主にマクロファージに発現し、死細胞の細胞膜表面に露出するPhosphatidylserineと結合して、死細胞除去に働くことが報告されている。しかしながら免疫応答や各種疾患における機能や役割は不明であった。ヒト関節炎(リウマチ)のモデルであるタイプIIコラーゲン(CII)誘発性関節炎マウスに抗TIM-4抗体を独自に作製、投与して治癒効果の検討を行った結果、症状を抑制する効果が認められた。注目すべきは、抗体投与を関節炎発症後、数十日経過した後期から行っても有意な治癒効果が認められた点にある。抗TIM-4抗体投与によるリンパ節CD4 T細胞の機能変化、血清中の抗CII抗体価に影響はなく、T・B細胞非依存性の抗CIIカクテル抗体誘発性関節炎マウスに抗TIM-4抗体を投与した場合にも、関節内の炎症性サイトカインTNF-a, IL-6, IL-1bの産生低下と治癒効果が認められたことから、抗TIM-4抗体はマクロファージやマスト細胞などの炎症性細胞に働き抗炎症作用を発揮すると推測している。これまで種々の免疫疾患モデルマウスに数々の細胞表面分子に対する抗体投与実験を行ってきたが、抗原免疫時や発症期に抗体投与を行い、抑制効果を認めるケースは多々あっても、明らかな病態形成後に抗体投与を行い、治癒効果が認められたケースは極めて希である。従って、TIM-4がヒト関節炎の治療を目的とした新たな標的分子になる可能性は高いと考えている。
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