研究課題/領域番号 |
22591102
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平潟 洋一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50238341)
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研究分担者 |
矢野 寿一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (20374944)
新井 和明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 研究補助員 (30547386)
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キーワード | 緑膿菌 / 細胞侵入性 / 培養細胞 / 殺菌効果 |
研究概要 |
浮遊状態と上皮細胞接着・侵入状態の緑膿菌に対する各種抗菌薬の効果を比較することで、緑膿菌のMDCK細胞およびA549細胞への侵入の意義について解析した。緑膿菌ATCC27853株、PAO1に対するメロペネム(MEPM)、セフタジジム(CAZ)、ゲンタマイシン(GM)、シプロフロキサシン(CPFX)の最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺菌阻止濃度(MBC)を測定した。ATCC27853株に対するMIC/MBCはMEPM0.5/0.5、CAZ1/1、GM1/1、CPFX0.5/1μg/ml、PAO1に対しては0.5/1、1/1、1/20.125/0.25μg/mlであった。これらは殺菌性の抗菌薬であり、一夜培養での成績は妥当と考えられた。さらに菌接種後30分、2時間、6時間、9時間、12時間のMBCを検討した。濃度依存性殺菌性抗菌薬であるGMおよびCPFXのMBCは30分後に低下し始めたが、時間依存性殺菌性抗菌薬であるCAZ、MEPMはこれより遅れ9時間、6時間で低下し始めた。 緑膿菌ATCC27853株、PAO1株をMDCK細胞およびA549細胞に3時間接触させ、浮遊細菌を洗浄後のシステムで評価を行った。抗菌薬の作用時間は2時間とした。MDCK細胞およびA549細胞に付着・侵入した細菌の場合、CAZとMEPMは256μg/mlの高濃度でも全く殺菌性を示さなかった。これに対し、GMは32μg/mlで2時間での殺菌効果を呈したが、殺菌率は99%に留まった。一方、CPFXは同様に2時間で殺菌効果を呈し、その殺菌率は99.9%であった。 以上の結果は、短時間で殺菌作用を示すGMとCPFXが細胞に付着・侵入した細菌にも効果を呈したものの、短時間殺菌脳の劣る抗菌薬では効果が見られないことを裏付けることとなった。上皮細胞に付着・貪食した細菌に対し、細胞内透過性の高いCPFXが最も優れたことから、細菌の上皮細胞への侵入は侵襲性感染症への進展のステップのみならず、抗菌薬からのエスケープ機構として働いていると考えられた。
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