H22年4月の研究代表者の異動に伴い、IL-13遺伝子改変動物(以下13KOマウス)は東北大学動物実験施設より福島医科大学の同実験施設(以下医大施設)の研究許可取得後に移動した。移動直後の動物よりパスツレラ感染が検出され、駆除に3ヵ月を要した。この点でH22年度研究費の使用が予定より5ヵ月程遅延した。研究計画で想定した様に、肺炎球菌(以下生菌)の静脈感染後に13KOマウスは対照の野生型に比べ有意に平均生存時間が短縮する点に関して、異動後の福島医大で3回目の確認を行った。H22年の上半期にて本研究の実験系は当該施設で継続・敷術可能と判断した。 液性免疫因子による生菌の増殖抑制効果の有無を、in vitroで確認した。通常の細胞培養条件下では血清添加でむしろ生菌の増殖が促進された。静脈感染後の宿主保護には、補体を含む液性免疫の補助に加えて、白血球と貪食細胞の早い応答が必須であると推測した。研究責任者が蓄積した結果より、B-1細胞が早期に活性化して媒介する接触性過敏応答がこのような宿主保護の感染免疫に関与すると仮説を立てている。 莢膜を欠損したクリプトコッカスの肺感染モデルでは、肺局所のTh1応答に依存した生菌排除が起こる。我々の検討では、野生型と13KOマウスではこの肺の応答には差を認めなかった。一方カンジダの標準株を用いた静脈感染実験系では、13KOマウスでは腎臓内のCFU増加と平均生存時間の短縮が野生型に比べいずれも有意差を示し、感染抵抗性が大幅に減弱していた(同様の報告はなく、新知見である)。 人の常在菌でもある肺炎球菌とカンジダに関しては、これらの急性血流感染症に、活性化したB-1細胞が重要な機能を発揮して宿主保護に寄与している点がH22年度の研究で明らかになった。次年度に向け更にこの機構を解明するための研究方向を推進する予定である。
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