研究課題
研究の具体的内容:申請書の内容に準拠した方法で、細菌・真菌の排除能、炎症(肺局所、腎臓内、血中)経過について、野生型とIL-13欠損マウスとを比較して観察した。静脈感染後にIL-13欠損(KO)マウスは、野生型のマウスに比べて平均生存期間が有意な差を持って短縮する点を、肺炎球菌とCandida albicans (ATCC18804)の2つの微生物(生菌)感染実験により確認した。また肺炎球菌の静脈感染後に、腹腔内のB1細胞が減少する点をフローサイトメトリーで確認した。カンジダ属の静脈感染後、腎臓内のCFU(生菌)量を4日目、10日目で繰り返し検討したところ、IL-13KOマウスと野生型の間でCFU量は統計学的な差を認めなかった。その一方で野生型の感染マウスの腎臓から、IL-13KOマウスに比べ有意に高いIL-17の産生が認められた。カンジダにおいては静脈感染モデルを行う一方気道感染(経鼻投与)後にも、気管支洗浄液(BALF)と洗浄後の肺の懸濁液の両方から生菌の定量を行った。結果、BALFと洗浄後の肺には野生型マウスで有意に多いカンジダが確認された。これは平成23年度で初めて確認し、これまでの推論と異なる逆の結果であった。研究の意義と重要性:肺炎球菌及びカンジダ属はいずれも高齢者や糖尿病、免疫不全などを有する人に重篤な呼吸器・血流感染症をおこし得る。いずれの微生物に対しても、早期の貪食細胞の集積と活性や炎症応答が予後に関わる。また早期の抗体産生能とこれらのバランス、調節なども感染症の治癒には重要である。一方アレルギー応答の主要な成因の一つと考えられるIL-13が、血流感染時には宿主の保護に働き、気道では菌の速やかな排除に関して障害となり得る可能性を本研究結果が示唆している。これらは同一の微生物に対して、感染経路と局所臓器の応答やIL-13の役割が異なる可能性を示唆しており、更に詳細なメカニズムの検討とその論理的な解釈が必要である。
3: やや遅れている
平均生存期間や予後に関わる結果が医学的な視点で最も重要と考えている。しかしIL-13の有無によりこれがどうして変化するのか、メカニズムの解明と論理的な解釈の考察と付与が遅れている。個々の結果の中で再現性の高い明確なものと、差のないものとが混在する。これらを結びつける論理と詳細な実験の考案、追考、実施などが充分追いついていない。これらに関しては、東日本大震災後の福島県における様々な影響も無視できない。
これまで蓄積した結果を十分吟味し、明らかな有意差があり再現性が高く、医学的な意義が深いと考えられる結果から選択分類し、重要性を再度評価する。この重要性に応じて推進、反復すべき実験などを絞っていく。絞られた結果に対してその理由を説明できる研究計画を遂行するように焦点を絞って方向性を決定する。医学的に重要な方向性を吟味し、限局した研究時間の中であるが、科学的な水準を維持した研究を持続できるように留意する。
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http://www.fmu.ac.jp/kenkyu/Profiles/39/0003823/profile.html
http://medicine.yale.edu/intmed/allergy/people/philip_askenase.profile