研究概要 |
研究の具体的内容: BALB/cバックグラウンドの野生型とIL-13遺伝子欠損マウスに、肺炎球菌(臨床分離株)とATCC18804(C. albicans標準株)を経静脈感染あるいは鼻腔より経気道感染を行い、肺内CFU量および肺懸濁液中のサイトカイン産生量などを比較検討した。 生菌(800万CFUと高い菌量)投与後6時間と24時間後で、肺内CFU量は、野生型と比べIL-13遺伝子欠損(KO)マウスで有意に減少した。気道感染24時間後の野生型マウス肺内TNF-α量はIL-13KO群に比べて有意に高く、IFN-γは反対にIL-13KOマウスで高値であった。Gr-1, CD11b共陽性の炎症細胞はIL-13KOの肺内で減少していた。Chitin(MW 770.8)のoligomerを抗原とし、ELISAで測定した血清中IgM量はIL-13KOマウスで野生型に比べ低値で、IgEは検出されなかった。 研究の意義と重要性:気道など局所のアレルギー応答や、IgE産生性などに関わるTh2サイトカインのIL-13は、人とマウスで相同性も高い。またIL-13には、自己免疫、マクロファージの機能の修飾など、多岐に渡る生理学的な機能も報告されてきている。肺炎球菌及びカンジダによる呼吸器感染と血流感染モデルを用いて、IL-13に依存した宿主応答の検討をこれまでの検討に加えて行った。 感染する臓器局所に長鎖の多糖体が接触する場合と、短鎖(oligomer)が最初に作用する場合とで、IL-13を介した自然免疫細胞の応答が異なる可能性があると推測した。M1マクロファージへのpolarizationや初期IgMの質などに寄与するIL-13の役割などに更に検討が必要と考えている。これらの研究により、感染症急性期の重症化の機序や、既存の抗菌薬と異なる治療の可能性などが検討できると考えている。
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