フィリピン、マニラのサンラザロ病院で2009年-2010年に81例のデングウイルス(DV)二次感染患者(デング熱57例、デング出血熱24例)および38例の健常者を登録した。急性期に患者末梢血血小板数は減少し、アポトーシス血小板(Annexin V結合、カスパーゼ3活性)とアポトーシス血小板貪食は増加した。血小板数vsアポトーシス血小板および血小板貪食は有意な逆相関を示した。健常者では血小板アポトーシスは低率であった。また、血小板アポトーシスと血小板貪食率は有意な正相関を示した。アポトーシス血小板の貪食クリアランスの分子機序を明らかにする目的で、milk fat globule-EGF factor 8 (MFG-E8)のインテグリン結合部位に変異を入れた変異体D89-Eを用いて血小板貪食の阻害実験を行ったところ、急性期の患者(デング熱、デング出血熱)の血小板貪食は有意に減少した。 この結果から、DV二次感染の急性期において血小板アポトーシスが亢進し、生体内ではアポトーシス血小板の貪食が促進されていることが示唆された。さらにはこのアポトーシス血小板貪食にはフォスファチジルセリン認識機構が関与していることが示唆された。 デング急性期には骨髄の巨核芽球形成が低下することがその血小板減少の原因とされているが、これとは別にアポトーシス血小板貪食クリアランスも本症の血小板減少機序の一役を担っていると考えられた。
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