主に血液疾患などの免疫抑制患者に発症する深在性真菌症である接合菌症の早期診断に有用と考えられる血清診断法の開発研究を試みた。我々は、真菌研究における新しいアプローチであるシグナルシークエンストラップ法を利用し、接合菌(最も分離頻度が多いRhizopus oryzae臨床株を使用)の膜蛋白質および分泌蛋白質を網羅的に同定して、抗原蛋白(候補A抗原)を候補に選出した。その結果、最も多い163のクローンを占めた蛋白(候補A:hypothetical protein、226アミノ酸から構成される約23kDaの蛋白)および2番目に多い45のクローンが得られた蛋白(候補B:predicted protein、486アミノ酸から構成される約46kDaの蛋白)を選出。その後、候補A抗原を検出するELISAキットを作成し、その評価を行った。その結果、候補A抗原は、R. oryzae、R microspores、R microspores var var. rhizopodiformis培養上清中に検出できることを確認した。一方、候補A抗原はAspergillus fumigatusやCandida albicans、Cryptococcus neoformans、他の接合菌種の培養上清中には検出されなかった。また、候補A抗原は、 R. oryzae、R microspores、R microspores var var. rhizopodiformisの培養上清中に経時的に増加していた。また、それらの接合菌を免疫不全マウスに肺感染させ、数日後に採血して、ELISAキットにて検出を試みた。その結果、血清中にも候補A抗原は検出可能であることが示唆された。現在、候補B抗原(46kDa蛋白)に関しても、ELISAキットの評価を開始している。今後、接合菌症の早期診断法としてのさらなる評価を試みる。
|