研究課題/領域番号 |
22591112
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
高桑 雄一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40113740)
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研究分担者 |
越野 一朗 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80328377)
萬野 純恵 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10101205)
田中 正太郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90380667)
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キーワード | 感染症 / シグナル伝達 / 脂質ラフト / リドカイン / G蛋白質共役受容体 |
研究概要 |
研究目的である「応募者らが見出した『リドカインによる可逆的ラフト消失作用』を基盤として、宿主細胞を標的とした新規の広スペクトル抗感染症薬としてのリドカインの有用性ならびに作用機序の分子機構を確率・解明」を達成するために、研究実施計画B、Dに関する詳細な検討を行った。 前年度、熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入には、プリンヌクレオチド受容体アゴニスト刺激による膜骨格蛋白質デマチンのリン酸化、さらにその結果起こる膜骨格構造の局所的な破綻が重要であることを示唆する結果を得ていた。これを踏まえ、計画B.について詳細な検討を行い、ヒト赤血球膜にはGsαと共役しデマチンのPKAリン酸化を引き起こしうるプリンヌクレオチド受容体であるP2Y11が発現していることをイムノブロット解析により明らかにした。また、10μM程度以上のATPを細胞外に添加することによりデマチンのリン酸化が起こること、赤血球をリドカイン処理すると、ATP刺激によるデマチンのリン酸化が消失することを確認した。上記P2Y11情報伝達経路のトリガーとなるATP分子の由来に関しても解析を行い、嬢虫体を放出する直前の感染赤血球内にも正常(非感染)赤血球の1/3程度(~400μM)ではあるものの、P2Y11シグナルを惹起するに十分な濃度のATPが残存し、嬢虫体とともに放出されうることが明らかになった。 上述の内容に基づき、計画D.「情報伝達再開による侵入抑制の解除」についても検討を行い、リドカイン処理赤血球に膜透過性のcAMP類似体を添加してP2Y11シグナルを再開すると、マラリア原虫の侵入抑制が解除されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年の震災後、建物倒壊の危険があるため、および耐震補強工事に伴う建物内立ち入り禁止措置がとられた間(3月11日から5月8日)、研究室に立ち入ることができず、従って申請書に記載した病原体を用いた研究(応募者らの研究室内にあるBSL2実験室で実施する計画)を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで熱帯熱マラリア原虫を中心に検討を行い、震災の影響があっても研究計画の予定通りに遂行することができた。次年度はやや遅れているCampylobacter jejuniならびにネコ免疫不全ウイルス(FIV)について重点的に研究を行い、研究計画の遂行と研究目的の達成を目指す。
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