研究概要 |
応募者らが見出した「リドカインによる可逆的脂質ラフト消失作用」を基盤として、宿主細胞を標的とした新規の広スペクトル抗感染症薬としてのリドカインの有用性ならびに作用機序の分子機構を確立・解明することを目的にマラリア原虫の赤血球侵入抑制のメカニズムの基礎について、GPCRシグナル伝達の結果起こる赤血球膜骨格構造破綻の分子機構に関する成果を論文に投稿し、掲載された(Koshino I, Mohandas N, & Takakuwa Y (2012) J. Biol. Chem. 287, 35244-35250)。 また、抗ウイルス感染薬としての有用性について、申請の通りネコ免疫不全ウイルス(Feline immunodeficiency virus, FIV)の感染(細胞侵入)に対するリドカインの効果を検討した。まず、FIV感染における宿主細胞膜の脂質ラフトの関与について、膜コレステロール除去によるラフト破綻効果がよく知られているメチルβシクロデキストリン(MBCD)を用いて検証した。ショ糖密度勾配遠心で低比重画分(ラフト画分)に回収される脂質ラフトマーカー蛋白質のフロチリン-1の分布は、MBCDの濃度依存的に高比重画分(非ラフト画分)に移行し、同時にFIVの感染も濃度依存的に減少した。すなわち、FIVの細胞侵入には脂質ラフトの構造と(あるいは)機能が重要であることが明らかになった。同様に、細胞をリドカイン処理すると、リドカインの濃度依存的にフロチリン-1の非ラフト画分への集積が認められ、同時にFIVの細胞侵入もリドカインの濃度依存的に阻害された。 以上の成果から、リドカインは抗マラリア作用に加えて、抗ウイルス(FIV)作用も有することが明らかになった。
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