平成22年以降、多剤耐性アシネトバクター属菌(MDRA)による院内感染が、日本でも発生するようになった。しかし、MDRAのカルバペネム耐性の主要耐性因子であるクラスD に属するカルバペネム分解型βラクタマーゼ(CHDL)を、病院検査部で実施可能な検出法は確立されていない。本研究の大きな目的は、迅速で簡便なCHDLの検出法を確立することである。平成23年までは、家兎ポリクローナル抗体を用いたイムノクロマト法を構築した方法を試みたが、非特異反応が多く認められるとともに、一部には十分な感度を得ることができないCHDLがあることが判明した。そのような背景から、マウスモノクローナル抗体を作成し、それを用いて再度イムノクロマト法によるCHDLの検出系を構築することにした。平成23年度、対象とした全てのCHDLに対する抗体作成と検出システムの構築が終了した。平成24年度は、日本におけるCHDL産生株の分離頻度が低いため、米国、英国、オーストラリア、オランダ、シンガポール、韓国、イタリアおよびフランスの研究者にその評価を依頼した。その結果、本方法の感度は約90%、特異度は約80%であった。論文で公表に向けて、現在、その評価結果を精査している。 一方、CHDLの酵素としての性質を詳細に検討するために、OXA-23の酵素学的パラメータを取得した。現在、詳細な反応機構を解明する目的で、研究協力者と共にOXA-23のX-線結晶構造解析を実施している。これまでに結晶化条件のスクリーニングが終了し、現在構造解析を進めている。OXA-23に関しては、詳細な酵素学的パラメータと共に構造解析結果を合わせて論文投稿する予定である。一方、OXA-40に関しては良好な結晶が得られており、OXA-40の詳細な酵素学的パラメータと合わせた論文の投稿を準備している。
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