研究課題
敗血症および全身性の細胞外細菌感染症における、防御第一線細胞である好中球からの回避機構については、未だ不明な点が多い。本研究は、敗血症または全身細菌感染症の臨床例より分離された菌株と、ヒト好中球とマウスモデルを用いたスクリーニングにより、好中球の防御機構修飾を分子レベルで解析し、新規好中球―細菌の相互作用と、防御修飾機構を明らかにすることを目的とした。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、一旦発病すると急速に進行し、ショック症状、多臓器不全などをともなう、致死率の高い重篤な感染症である。本邦において、2000年以降劇症型感染起因菌として増加しているemm49型A群レンサ球菌に属する劇症感染分離株から作成した各病原因子欠損株、および非劇症感染分離株を、健常人の抹消血から分離精製した好中球に感染させたところ、劇症型分離株の感染により、好中球にアポトーシスではなく、ネクローシスが誘導されることが判明した。また、劇症型分離株は、カルシウム依存性に好中球に接着すると、貪食される前に、劇症型分離株で発現が増強する溶血性毒素ストレプトリジンOにより好中球細胞膜に孔を形成し、細胞毒であるNADグリコシダーゼを好中球細胞質内に送り込むことが明らかとなった。さらに、好中球表面への接着には、劇症型分離株において発現が増強する膜貫通型分子と、好中球細胞表面に発現する活性化型CD11bが必要であることが判明した。以上より、劇症型分離株は、細胞障害性キラーT細胞と類似した分子機構により、好中球ネクローシスを誘導し、宿主生体防御を傷害して結果的に好中球による殺菌を回避し、重篤な症状と劇症型感染に特徴的な病態を形成するということが考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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