研究概要 |
本研究では、大脳皮質形成異常が発達過程にある脳へ与える影響について明らかにすることを目的とし、皮質形成異常を有してんかんを発症するモデル動物(前脳特異的Cdk5欠損マウス,Cdk5cKOマウス)を用いてその分子メカニズムを解明している。Cdk5cKOマウスは、けいれん発作の出現に伴い神経変性を生じ、マイクログリアの活性化を伴っていた。我々はこれまでの研究において、マイクログリアの活性化には神経細胞の過剰興奮の繰り返しにより分泌される組織性プラスミノーゲン活性化因子(tissue-type plasminogen activator, t-PA)が関与していることを明らかにしている(Takahashi S, et al. Am J Pathol 176 : 320-329, 2010)。そこで、神経変性におけるt-PAの関与を検討する目的で、Cdk5cKOマウスとt-PAノックアウトマウスを交配し、t-PAを欠損したCdk5cKOマウス(DOKOマウス、Cdk5cKO ; tPA-/-)の表現型と神経病理変化を検討した。Cdk5cKOマウスとDOKOマウスとの間に体重変化、生存率には差はなかった。神経病理学的検討によると、DOKOマウスではグリア細胞の増生は抑制されていたが、神経変性所見には差がみられなかった。この結果は、Cdk5cKOマウスにみられた神経変性の病態には、tPAが関与しないメカニズムが存在することを示している。本研究の成果は、難治性てんかんを有する患者の神経学的予後を改善させる分子標的療法の開発基盤となる可能性がある。
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