視床下部GnRHニューロンには概日時計振動シグナルが伝わり、性周期や思春期発来に関与していることが示唆されている。しかし、その詳細なメカニズムはわかっていない。一方、Kisspeptin-GPR54系は思春期発来因子として注目され、その遺伝子異常により性腺機能低下症を示すことから、その関与が明らかとなっている。本研究では平成23年において、引き続きGnRHニューロン由来でGnRH分泌を示すGT1-7細胞における時計遺伝子とGnRH遺伝子およびGnRH分泌に対するKisspeptinの反応性を検討した。 GnRH遺伝子もしくは時計遺伝子(Per2/Bmal1)プロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を導入したGT1-7安定発現株を確立した。これを用いて、Kisspeptin投与による両遺伝子発現の変化を検討したところ、転写レベルにおいてGnRH遺伝子発現は増強されるが、時計遺伝子発現には変化がなかった。さらに、灌流系の細胞培養システムを用いて長期間の発光連続測定と同時にGnRH分泌測定する系を構築を試みたが、現在まで完成していない。引き続き、研究を継続し、Kisspeptinによる時計遺伝子概日リズム振動への影響のみならず、GnRH遺伝子発現およびGnRH分泌リズムへの影響も明らかとしたい。 これらの結果により、Kisspeptinは時計遺伝子発現には直接関与せず、時計遺伝子発現とGnRH遺伝子発現との間には相互作用はないことが示唆される。しかしながら、遺伝子転写レベルではなくGnRH分泌レベルにおいては、概日リズム振動がみられる可能性があり、Kisspeptinがその修飾因子となっている可能性も残されている。
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