本研究の目的は、正常小児に部ける前頭葉の認知/情動機能の発達とその臨界期を確立することにある。さらに、注意欠陥多動性障害(ADHD)や広汎性発達障害(PDD)などの発達障害児と前頭葉てんかん児の情動障害と認知・情動処理系の相互作用を定量化して、発達障害を呈する児の認知神経科学的診断と治療評価基準を明らかにする。以下に正常小児の前頭葉機能の定量化と発達障害児、てんかん児の神経生理学的研究成果を記す。 1.健常小児における前頭葉の情動評価機能(モラル判断;警告信号、Markov decision task;報酬予測信号)の発達過程と完成時期が交感神経皮膚反応を測定することにより定量化が完成しつつある。 2.健常小児における前頭葉の情動行動機能である行動抑制について、その発達過程と完成時期を電気生理学的(Go/NoGo、stroop、サッケード)に定量化が完成した。具体的には、行動抑制は15歳頃成人域に達することが明らかとなり、発達障害児では約5年その成熟が遅延していることが判明した。 3.発達障害の病態モデルである前頭葉てんかん児で焦点部位(前頭葉背外側、眼窩部)が証明された患児にGo/NoGo・サッケード課題を行ったところ、著明なミスサッケードとコミッションエラーを認めたことから、行動抑制部位は前頭葉背外側、眼窩部であることが判明した。 4.治療前後において発達障害児の認知・情動機能を検討しているが、発達障害の電気生理学的診断と治療評価に認知神経科学的評価は有用であることが確認されつつある。
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