1. 無熱性けいれん初発児のてんかん移行への危険因子を明らかにするために、無熱性けいれん初発児の経過を追った。てんかん移行率は30ヵ月時点で60%前後であった。またてんかん移行の危険因子として、(1)部分発作、(2)脳波上の焦点性突発波の存在、が挙げられた。 2. てんかん患児における認知・行動異常に関与すると想定されている前頭前野の発達を解剖学的視点より検討した。(1) 三次元MRIを撮像し、コンピュータ解析処理ソフトを用いて脳表面の3-D画像を作成。(2) 解剖学的に正確な部位同定を行い、前頭葉および前頭前野の体積を定量的に測定し、その成長過程を客観的に検討した。健常児では前頭葉に占める前頭前野体積の比率は思春期前後(7~15歳)で急速に増大し、以降は成人値とほぼ同様になるとの結果をもとに、てんかん児での経緯を検討した。前頭前野体積はてんかん児の発作頻度や脳波所見により相違を認めた。良性小児てんかんやてんかん性脳症において、発作頻度・脳波所見の増悪(突発波頻度の増加など)が長期間持続すると前頭前野の成長に影響を及ぼす可能性が示された。また、前頭葉てんかんでは発作頻度によって前頭前野の成長に相違を認めたことから、てんかん発作そのものが脳に形態的影響をもたらす可能性が示された。 3. さらに、高次脳機能障害を含めたてんかんの難治化と脳波所見との関連性について検討した。熱性けいれんにおいて前頭部に突発波を有する場合、その後にてんかんを発症するリスクが高まることを確認した。また、良性小児てんかんにおいて発作の難治化・認知行動異常を来たす危険因子として、突発波の高頻度出現・長期持続が挙げられた。さらに、突発波の前頭部焦点も難治化と関連性を認めた。このことより、前頭部突発波を有する児では難治化に留意し、てんかん児のQOL向上に発作の早期抑制、脳波の早期改善が重要であるという知見を得た。
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