研究課題/領域番号 |
22591125
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
高野 知行 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80236249)
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キーワード | 多小脳回症 / てんかん原性 / 介在ニューロン / parvalbumin / Ca結合蛋白 / 傍多小脳回領域 |
研究概要 |
(目的)大脳皮質奇形を基盤とするてんかん原性発現のメカニズムを明らかにするため、イボテン酸による実験的多小脳回症においてカイニン酸誘発性のけいれん重積状態を発現せしめ、重積の結果生じたけいれん性細胞障害、および海馬を中心とした発作発現後の神経回路の再構築を評価し、けいれん準備性の発現基盤を形態学的に解析することを目的とする。昨年度においては、多小脳回の皮質形成過程には大脳基底核原基由来の抑制性の介在ニューロンの細胞移動が関与し、皮質興奮性を修飾し得る要因の一つであることを明らかにした。本年度は、Ca結合蛋白であるparvalbumin陽性の介在ニューロンの分布を解析し、多小脳回における皮質興奮性の変容について考察した。 (方法)生後0日目のシリアンハムスターの右大脳皮質内に実験群では1μg(1μ1)のibotenateを、対照群では同量の生食水を接種した。接種後140日目の両群の脳組織をパラフィン包埋しparvalbumin免疫染色を行った。また、parvalbumin陽性細胞数を多少脳回の中心部と傍領域(外側および内側)の部位別に算出し比較した。 (結果)対照群ではparvalbumin陽性細胞は大脳皮質に広範囲に分布し、視床網様核には密に集積し、海馬にも少数が散見された。実験群でのparvalbumin陽性細胞は異常皮質以外の領域では対照群とほぼ同様の分布を示した。一方、多小脳回領域においては中心部に比し、外側の傍多小脳回領域において有意に増加し、内側傍多小脳回領域においては著明に低下していた。これは対照群における同一領域との比較においても同様であった。 (結語)多小脳回症における抑制性の介在神経細胞の分布は不均一であり、内側傍多小脳回領域では最も低下していた。これは多小脳回症におけるてんかん原性は異常皮質自体よりも、内側部に高いことを示唆するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多小脳回症においては、その発生過程において抑制性の介在ニューロンが異常皮質領域に動員され、かつ、外側と内側の傍多小脳回領域に不均一な分布を呈することが示された。これは、多小脳回症のてんかん原性領域が異常皮質自体ではなく、隣接する皮質領域に存在することを示唆するものと考えられ、多小脳回症のけいれん準備性の一端が明らかにされた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、多小脳回症の発生過程で生じる抑制性の介在ニューロンの不均一な分布が、幼弱期におけるけいれん重積状態によってどのような変化を受け、それがけいれん準備性にどのように寄与するかを明らかにする。ハムスターを用いたカイニン酸誘発性のけいれん重積状態の研究報告はわずかであるが、カイニン酸の接種量、時期、方法などについて微調整を行うことにより当初の研究目的を達成したい。
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