研究課題
(1)はじめに:脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の症状は、SMN2遺伝子発現の程度によって修飾されていると考えられている。SMN2遺伝子のプロモーターには少なくとも2種類のタイプ、すなわちPAC 125D9タイプ(1型プロモーターと略す)とPAC 215P-15タイプ(2型プロモーターと略す)が存在する。そこで、研究者らは、SMN2遺伝子発現機構を解析するために、SMA患者における1型および2型プロモーターの頻度を調査し、さらにそれらの転写活性を解析した。(2)SMA患者における1型および2型プロモーターの頻度:DHPLC法および塩基配列決定法を用いて、SMA患者52例における1型および2型プロモーターの頻度を調査したところ、51例の患者のSMN2遺伝子は、2型プロモーターのみ存在し、1型プロモーターは存在しないことが判明した。しかし、1例の患者(歩行可能な軽症型)では、1型プロモーターおよび2型プロモーターを有するSMN2遺伝子が存在した。本症例では、SMN2遺伝子発現の高いことが予想された。(3)1型および2型プロモーターの転写活性:1型プロモーター特異的塩基配列、2型プロモーター特異的塩基配列を蛍光蛋白リポーター(ルシフェラーゼ)・ベクターに挿入したコンストラクトを作成し、それぞれのベクターを培養神経芽細胞に導入し、ルシフェラーゼ発現による蛍光強度を比較した。その結果、1型プロモーター特異的塩基配列ベクターではルシフェラーゼ発現が認められたのに対し、2型プロモーター特異的塩基配列ベクターではルシフェラーゼ発現は認められなかった。培養液にBt2cAMPを添加しても、この傾向は変わらなかった。この実験より、2型プロモーター特異的塩基配列には転写抑制因子が存在することが予想された。(4)結論:1型および2型プロモーターの差異がSMN2遺伝子発現に影響を与えている可能性が高い。
すべて 2010
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