研究課題
(1)はじめに:脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の症状は、SMN2遺伝子発現の程度によって修飾されていると考えられている。SMN2遺伝子のプロモーターには少なくとも2種類のタイプ、すなわちPAC 125D9タイプ(1型プロモーターと略す)とPAC 215P-15タイプ(2型プロモーターと略す)が存在する。そこで、研究者らは、SMN2遺伝子発現機構を解析するために、SMA患者における1型および2型プロモーターの頻度を調査し、さらにそれらの転写活性を解析した。(2)白血球中のSMN2mRNA解析:SMN1遺伝子を完全に欠失し、1型プロモーターを有するSMN2遺伝子1コピーおよび2型プロモーターを有するSMN2遺伝子1コピーを有していた患者は、支えるものがあれば歩行が可能な軽症型であった。白血球中のSMN2mRNAは、他のSMA患者よりも少ない傾向があった。(3)1型および2型プロモーターの転写活性解析:平成23年度も、前年度に引き続き、1型プロモーター特異的塩基配列、2型プロモーター特異的塩基配列を蛍光蛋白リポーター(ルシフェラーゼ)・ベクターに挿入したコンストラクトを作成し、それぞれのベクターを培養神経芽細胞に導入し、ルシフェラーゼ発現による蛍光強度を比較する実験を繰り返した。その結果、1型プロモーター特異的塩基配列ベクターよりも、2型プロモーター特異的塩基配列ベクターではルシフェラーゼ発現は高くなる傾向が認められた。Bt2cAMP、フォルスコリンを添加しても、この傾向は変わらなかった。(4)結論:白血球中のSMN2mRNA解析およびプロモーターの転写活性解析より、1型プロモーターの存在がSMN2遺伝子発現を活性化する可能性は否定的となった。
2: おおむね順調に進展している
PAC 125D9タイプ(1型)プロモーターはSMN1遺伝子に多いこと(平成22年度)、PAC 125D9タイプ(1型)プロモーターとPAC 215P-15タイプ(2型)プロモーターの違いが転写活性に与える影響は大きくないこと(平成23年度)が明らかになった。これらは、従来まったく知られていなかった事実である。
(1)これまでの研究成果をまとめて英文論文を作成しているところである。(2)今後、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療開発を目指して、SMN2遺伝子転写を促進する化合物の探索を進める予定である。現在、バルプロ酸やサルブタモールのSMN2遺伝子転写促進作用について検討している。(3)また、プロモーターやスプライシング以外のSMA重症度を規定する因子を明らかにし、さらに、その因子に作用する化合物を探索する予定である。現在、SMA重症度と低分子量Gタンパク質を介する経路との関連について検討を始めた。
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