1.我が国の小児におけるビタミン欠乏症の現状把握 平成22年度は、全国の小児科機関からビタミン欠乏症例の有無について調査を行った。まだ調査途中ではあるが、平成23年3月末までにビオチン欠乏症が46例、ビタミンB1欠乏(脚気)が6例、発見された。特にビオチン欠乏は予想以上に多くの患者が発見された。現在、これらの患者の詳細を検討しているが、ビオチン欠乏では難治性湿疹・脱毛が特徴で、「アトピー性皮膚炎でステロイドを使用したが改善しない」ことを契機に本疾患と診断されている症例が多く認められた。また食生活では、ミルクアレルギーのため数か月間のアレルギー用ミルクを使用後に発症した症例が20例、糖原病やガラクトース血症など代謝異常のため、特殊ミルクの使用した症例が4例、認められた。哺乳・食事内容の記載がない症例もあり、最終的には普通ミルク以外の摂取によるビオチン欠乏症例がかなりの割合を占めるのではないかと予想される。現在、ビオチンのミルクへの添加は認められていないが、ビオチン併用が必要な状況が明らかとなってきた。 ビタミンB1欠乏については、嘔吐・下痢に引き続いて生じた心不全のために救急搬送された症例が、6例中5例に認められた。食生活では数か月にわたるイオン飲料の過剰摂取が5例に認められた。過剰摂取となった背景については更に検討が必要だが、健診など小児保健の場での啓発が重要である。 2.質量分析器によるビタミン欠乏の早期発見や治療効果判定への有用性 今年度はGC/MSとタンデムマスの2つの質量分析を用いて、ビオチン欠乏症を検討し、それぞれ特徴的な異常代謝産物を検出できた。特にGC/MSでは、3-ヒドロキシイソバレリン酸(3HIV)がほとんどの症例で認められ、感度が高いことが明らかになった。他のビタミン欠乏症での有用性や治療効果判定等については症例数を増やし、来年度も検討を続ける。
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