研究課題/領域番号 |
22591129
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
長谷川 有紀 島根大学, 医学部, 助教 (00362921)
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キーワード | ビオチン欠乏 / ビタミンB1欠乏 / 特殊ミルク / イオン飲料過剰摂取 / 難治性湿疹 / 心不全 / 質量分析 |
研究概要 |
1.我が国の小児におけるビタミン欠乏症の現状把握 平成23年度は、全国の小児科機関から得られたビタミン欠乏症例の調査結果のまとめと、新規患者症例の把握を並行して行った。新規症例は平成23年3月末までの1年間にビオチン欠乏症が2例、疑い症例は2例あり、ビタミンB1欠乏(脚気)については4症例が発見された。ビオチン欠乏については、この1年間での診断症例はこれまでに比べ大幅に減少した。これは多くの症例報告がなされるようになり、ビオチン欠乏についての認識が広まったことを反映しているのかもしれない。今後は、特殊ミルクを使用する場合にはビオチン・カルニチン併用を基本とするような指針作りも必要と考えられる。 ビタミンB1欠乏は、調査から確定診断例が24例、強く疑われた症例が10例見つかり、昨年までの6例から大幅に増加した。また新規症例も4症例あり、Wernicke脳症を呈していた症例も認められた。患者の二次調査からは、発症年齢は6ヶ月から1歳半までが7割、また10歳以上が2割と2極化することが明らかとなった。イオン飲料の過剰摂取は約6割に認められたが、10歳以上はいずれも炭水化物に偏った食事や拒食症が原因で潜在的な虐待の関与も浮かび上がってきた。 2.質量分析器によるビタミン欠乏の早期発見や治療効果判定への有用性 ビタミンB1欠乏についてはGC/MSのみで診断できた症例はなかったが、排泄される代謝産物の組み合わせから強く疑われ、診断に至った症例があった。治療後には異常代謝産物は消失し効果判定に有用であった。またビオチン欠乏でもGC/MSによる3-ヒドロキシイソバレリン酸(3HIV)の検出が早期診断に、治療後には3HIVが速やかに消朱し、効果判定にそれぞれ有用であった。一方、タンデムマスでは治療後もしばらくC5-OHの高値が続き、ビオチン投与中止の判定に有用であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミン欠乏について、アンケート調査結果や実際に診断した症例から病歴の特徴を明らかとしてきた。今後はこれらの特徴を発症の既定因子としてどの程度関与するか、疫学的に検定を行いたい。またビタミン欠乏の診断と治療判定に対する質量分析の有用性も明らかにしつつある。遅れている点として、質量分析と同時に血中げタミン値を測定する予定であったが、診断時には治療が始まっていることが多く、相関の検討が困難である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、今後も症例の特徴を明らかにする。平成23年度はアンケート調査の回収が遅れ、その後のデータ解析が中心となったために全体の発表ができなかった。今後は、アンケート結果に疫学的検定を加えて公表したい。
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