1. 我が国の小児におけるビタミン欠乏症の現状把握 平成24年度は、23年度に引き続き新規患者症例の把握と、昨年度末以降に連絡のあった調査患者のまとめを行った。新規症例はビオチン欠乏症が4例、疑い症例が1例発見された。ビオチン欠乏の患者数は昨年とほぼ同様であり、ほとんどがアトピー性皮膚炎やミルクアレルギーを基礎疾患として特殊ミルク使用例であった。 今年度は新たなビタミン欠乏症の把握としてカルニチン欠乏についても調査を行ったところ、平成24年度のみで19症例が発見された。うち15人は発達遅滞やミルクアレルギーなどによる特殊ミルクの使用もしくは経管栄養によるカルニチン不足があり、7人にはピボキシル基を持つ抗菌薬の使用があった。なおビオチン欠乏患者のほとんどがカルニチン欠乏もきたしていた。特殊ミルク摂取時のビオチン・カルニチン併用を基本とするようなコンセンサスづくりについては小児科と皮膚科の連携が必要であり、また抗菌薬使用については耳鼻科とも連携して対策を行う重要性が明らかとなった。 ビタミンB1欠乏は、新規に3症例の報告があった。昨年の調査以降も症例報告は相次いでみられており、おそらくさらに多くの患者がいるものと思われる。新規3症例のうち2例は乳児でイオン飲料の過剰摂取によるものであり、両親のイオン飲料に対する偏った信頼が明らかとなった。 2. 質量分析器によるビタミン欠乏の早期発見や治療効果判定への有用性 タンデムマスではカルニチン欠乏とビオチン欠乏では、GC/MSでは異常の認められない早期から異常代謝産物の排泄増加を認めることが明らかとなった。また症状が消失した後にもすぐには正常化しないため、特にビオチン・カルニチン投与中止時期の判定に有用であった。またGC/MSでは異常が認められた場合、検査の正常化と臨床症状の改善とがパラレルであり、特に急性期の効果判定に優れていた。
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