発熱でけいれんが誘発されるてんかん患者において、電位依存性ナトリウムチャネルをコードするSCN1A遺伝子変異が高率に検出されている。SCN1A遺伝子変異を伴い発熱誘発けいれんをもつラットが開発された。本研究ではこのラットを用いて、熱性けいれんが発症する分子病態基盤を解明するとともに、新規治療法の開発を目指す。以下の研究成果を報告する。 (1)血液ガス分析: 熱性けいれんが誘発された直後は、アルカローシスと二酸化炭素分圧の低下が認められ、呼吸性アルカローシスが生じていた。野生型と比べ、Scn1a遺伝子変異ラットでは、より軽い呼吸性アルカローシスで熱性けいれんが誘発された。 (2)二酸化炭素吸入療法: 5%二酸化炭素含有ガスでは、有意な発作持続時間の短縮を認めなかったが、10%二酸化炭素含有ガスでは、強力な抑制効果を認めた。発作抑制後の血液ガス分析では、10%二酸化炭素含有ガスの場合に、有意な二酸化炭素分圧の上昇、pHの低下が認められた。本研究課題によって、Scn1a遺伝子変異に関連した熱性けいれん感受性は、呼吸性アルカローシスに対する高感受性に基づく神経の過剰興奮である可能性が示唆された。この病態を補正する二酸化炭素の吸入で発作が抑制できることを示した。 SCN1A遺伝子変異をもつてんかん患者では頻繁に熱性けいれんが誘発され、かつ遷延しやすいため、小児救急医療を要請することが多い。コメディカルや家族が使用できる安全かつ即効性のある治療法の確立が望まれていおり、二酸化炭素吸入療法は、新たな治癒法として期待される。
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