研究概要 |
本研究開始時点までに我々は、血中ロイシン高値24例の分枝鎖αケト酸脱水素酵素複合体(BCKAD)活性を測定し、14例をメープルシロップ尿症(MSUD)罹患者と診断していた。平成22年度には1症例、23年度には6例を新たに解析し、3例を罹患者と診断した。正常活性を認めた14例中2例(同胞例)は血中ロイシン増加が続いており、遺伝的原因が強く推定された。22年度は上記同胞例のBCKAD遺伝子解析(E1α,E1β,E2)を行い、変異は検出されていない。この同胞例がチアミン反応性MSUD罹患者と仮定すると、これらサブユニットの大欠失等の可能性は考えられず、新規の病因が推測された。 候補分子として今年度は分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCATc;細胞質局在,BCATm;ミトコンドリア局在)を解析し年が、変異は検出されなかった。続いて、BCKADの活性調節酵素であるBCKAD kinase (BCKDK), BCKAD phosphatase (PPM1K)のうち前者を解析したところ、同胞例の両者に同一のヘテロ接合性1塩基置換が同定された。 BCKAD kinaseはリン酸化によってBCKAD活性を抑制する酵素であり、BCKDK欠損マウスはBCKAD活性の亢進によって血中ロイシン低下を示すと報告されている。従って、血中ロイシン高値の原因となりうるBCKAD遺伝子の変化は機能亢進性変異である必要があり、ヘテロ接合性変異による常染色体優性遺伝形式を示すことが想定される。このようなヒト症例は現在まで知られていない。
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