研究概要 |
Wilson病患者において生体内銅蓄積による様々な肝障害が認められ、治療を行ってもその進行が進む事が報告されている。本研究の目的は患者における肝障害発症メカニズムをWilson病モデルラット(LECラット)を用いて銅による活性酸素・レドックス制御機構の観点から検討することである。更にレドックス制御において活性酸素消去による生体防御に有効な抗酸化物質を明らかにすることにより予防・治療効果を検討する。本年度の研究結果として、LECラットにおける過酸化脂質、抗酸化物質量(vitamine A、C、E、coenzyme Q10)の測定、検出結果を得た。LECラット血清中において抗酸化物質であるVEは週齢とともに減少する傾向が認められた。VA、VEはその濃度が高い群と低い群に分かれた。また、VA, VEには相関関係が認められた。過酸化脂質の指標であるHELは生後4週齢より肝臓組織に認められた。脂質過酸化分解生成物のMDAを血清中及び肝臓中での検出を試みた。血清中MDAは週齢により増加を示した。組織中では週齢とともに増加する傾向が認められたが高い群と低い群に分かれた。これらのことから肝炎症状が発症する12週齢よりも前から肝細胞障害が起きていると考えられ、個体の症状の違いは8週齢以前におけるレドックス制御機構の違いが関与していると考えられた。また、アポトーシス細胞の検出、cleaved caspase-3の検出を行ったところ、生後早期~4週齢と16週齢以降にその発現が肝組織に認められた。銅蓄積による細胞障害により生後早期と肝炎症状発症後にミトコンドリア障害によりアポトーシスが誘導されていると考えられた。これらの結果から今後は抗酸化作用による早期の予防・治療による肝障害が予防を試みる。
|