Wilson 病は肝臓に銅が蓄積することにより様々な障害を引き起こす。近年、本症患者で肝がん発症の報告が散見している。本研究の目的は、本症の肝障害の発症機構を明らかにし、 その予防方法を開発することである。 モデルラットを用いた検討の結果、生後早期から肝臓に銅が蓄積し、 ミトコンドリア障害が誘導されていることが明らかになった。また、酸化ストレス制御機構が低下している可能性が示唆された。更に、本症患者体内の酸化ストレスプロファイル (OSP) を解析した結果でも、 ある種の脂溶性抗酸化物質の血清値が低下している傾向が認められた。OSP 解析プロットでは、本症患者の約半数が酸化ストレス予防能の低い「低活性ゾーン」におり、これらの抗酸化物質の摂取で体内の抗酸化能を改善し、肝障害の進行及び肝がん発症を予防できる可能性が示唆された。
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